キングリオンで魔物を退治した後、騎士団は道すがら現れた魔物を倒しながらヴァレイへ戻ってきました。 運良く馬車を掴まえられたので、ゼレスからラインウッド、グラツィアまでを馬車で。 グラツィアから王都へは徒歩です。 街の端っこにある騎士団の本部では、騎士団の留守を預かる団員が待っていました。 「オカエリ!!ミンナ元気カ!」 「ヨクカエッテキタナ。」 「皆さん、お帰りなさい。お疲れ様です。」 幻術師兄弟のルフル、ラフラ。ヴァルキリーのエルヴェが本部の門前に立っているようです。 「バルス、オ前ミンナノ足ヲヒッパラナカッタカ!!」 「うるせー!!んなわけねーだろっ!」 「・・・・セリウス、怪我シテルナ。」 「・・・・・・ちょっとね」 「ただいま、エルヴェさん。いつも留守任せてしまってすまないな。」 「いいえ、いいんですよ団長。」 エルヴェさんは騎士団に入団したすぐ後に病気を患ってしまって、遠征に行けなくなってしまったのです。 それからずっと、彼女は騎士団が遠征中の留守を預かっています。 ルフルとラフラは別に病気や怪我でもないのですが、団長の意向で留守を守っています。 もちろん彼ら、日がなダラダラ過ごしてしているわけではなく、ヴァレイの防衛に日々勤しんでいるのですが。 団員はねぎらいの声を掛け合いながら、本部の扉を開きました。 今夜は宴会ですね。 さて、女の子(子じゃないけど・・)が居間に集まっているようです。 こっそり覗いてみましょう。 「もう次の予言の年かぁ・・・早く出ないと駄目ね。」 「そうねェ、あ、そこの私のスカートとって、洗うから。」 「はい。」 「ありがと。はー、ほんと今回は疲れたわー。・・もう年かしら・・。」 「・・言っちゃ駄目よ。まぁ、魔物多かったもの。所でレルミ、セリウス君とは進展」 「しっつこいわねぇテルミン!!何もないって言ってるじゃない!」 「・・・セリウス君の何処がいいのかあたいには分かんないですよ・・。」 「えー!だって、可愛いしかっこいいじゃないの!!」 「・・・・・・・・・」 「それを言ったらフェルちゃん、バルス君だって」 「あっ、あいつは関係ないです!!」 「あら、顔赤い。」 「―――――――!!」 バターン。 「・・・ちょっとレルミ。後輩からかうのはよしなさいよ・・。」 「え?からかってなんかないわよォー♪」 「ハァ・・ホントにもう・・。」 「・・・・フフフ。」 「? あ、エルヴェさん。」 「テルミン、さんづけはなしよって言いましたよね?」 「あーっと、ごめんなさい。ついね。」 「年上の人もみーんなエルヴェさんって呼ぶんだもの。なんか年とった気分よ。」 「団長が呼んでるからねー。」 「そうなのよねェ。・・あ、所でティアルちゃん知らないかしら?あとウェル君も。」 「?なんか悪さでもしたの、あの子達。」 「ううん、そろそろ訓練の時間だから・・・」 「あららぁ、逃げちゃったの?」 「エルヴェさ・・っと、エルヴェも大変ね。・・あ、そう言えばルーインとカインは? さっき見てきたんだけど、ちゃんと寝てる?」 「ええ、大丈夫よ。カイン君はね、すごく元気。」 「・・・そう、良かった。」 「また行ってあげて?・・じゃあ、あの子達見かけたら言って頂戴。」 「いいわよ、任せて。」 「さて、洗濯終わったらあの子達のトコ行こうかなー。」 「もう、さっさと行ってきなさいよ。洗濯くらいしといてあげるじゃない。」 「え、本当?」 「本当よ。ほら。」 「ありがとう!!じゃあ行ってくるわ、レルミ!」 「はいはい、行ってらっしゃい。」 一方男の子(?)は庭に集まっているようです。 こちらもこっそり覗いてみましょう。 「はー、つっかれたなぁ。」 「そうだねェ兄さん。」 「・・お。」 「ん?あ、ディルス君かァ。君のお兄さん達は?」 「あ、セリ兄は一応、町医者の所行ってます。バル兄は工房に。」 「そか、セリウス君の。」 「はい・・。」 「・・心配?」 「・・まあ、そりゃ。あの時は本当ビックリしましたし。」 「だろーねぇ。バルス君がふざけて包帯グルグル巻きにしたりするから。」 「・・へ!?あれ、バル兄の仕業なんですか!?」 「・・・あー、しまったァ。」 「あーあァ、バルス君に怒られるぞォ、マーリン。」 「・・・っんの、くそ兄貴・・!!」 「あ、ディルスく・・・・あー、行っちゃったァ。」 「あの子、怒ると怖いんだよなァ」 「うんうん。」 「・・・しょうがないねェ。とりあえず洗濯持って行こうか、兄さん。」 「ん、そーだな。」 「マーリンは次の災厄の魔物ん後、いっちばん先に抜けるんだろォ?」 「うん。もう足がどうにも、言うこと聞いてくれないからねェ。」 「オイラもそろそろだけどね。ってー事は、ガラッと変わるんだな。 丁度入れ替わりにオイラの子が入るんだなぁ。役に立つといいんだがねェ、うちの子達。」 「兄さんトコの子達は、皆元気でいいじゃないか。 うちのルーインは体が弱いから、多分入団出来ないんじゃないかなァ。」 「んー、じゃあやっぱ」 「留守番組かな。団長にも少し言ってあるよ。」 「カインは?」 「あの子は大丈夫だよ。」 「そうかぁ、良かった良かった。」 「・・・早いねェ、兄さん。」 「おぅ、早いよなァ。」 二人は感慨深くこんもりと盛り上がった洗濯物を見つめます。 微妙に感慨も何もあったもんじゃない絵です。 さて、町医者と工房、それぞれから帰って来たヨムライネン家の兄弟ですが。 何やら揃って眉間に皺を寄せています。 何かあったのでしょうか。 「・・・おう、兄者。どうだったよ。」 「・・・問題ない。」 「じゃあ何でんな顔してんだよ。」 「・・・金をたくさん取られた・・・・。」 「で?」 「・・睨んだら、少しは安くしてくれたが。・・・まだ高い。」 「バッカだなぁ兄者。そこでこう、胸ぐらをぐっといけば更に半額だって!!」 「・・・お前・・そんな事してるのか・・・・」 「冗談、冗談だって。」 「・・まったく。・・それで、どうだった。」 「ん?あー、一応預けてきた。鎧の方は何とかしてみてくれるとさ。兜はどうにもなんねーって。 これから毎日工房通わないとなー、兄者。頑張れよ。」 「・・・・まぁ、仕方ない。魔騎士の鎧を鍛えられる工房がある事自体、運がいい・・・」 「さすが王都ってトコだよなァ。」 「・・・そうだな。」 「じゃあ取り合えず、兜の方は俺が預かるぞ。ヴィムの親父さんトコ預けてくる。 帰る時に間に合わなかったら送って貰えばいいしな。」 「ああ。」 「さーて、久々に旨いもん食える・・・・っとおぁ!!?」 「バルス?」 「な、なんだなんだなんだ!・・・・・・こ、子供・・・?」 「・・・・・ウェル、ティアル。」 「へ?あ、ああ!お前らかよ・・。」 「セリウスさん、バルスさん、おかえり!」 「・・・・・」 「ウェル、黙ってちゃ駄目でしょー」 「・・・お帰りなさい。」 「・・・ただいま。元気だな、ティアル。」 「えへへ・・・。あのね、セリウスさん!今ね・・」 「ティアル。」 「え?あ!エルヴェさん来ちゃった!!いこ、ウェル!」 「・・・・・(こく」 「・・・・行っちまった。」 「・・・・・・・。」 「何だったんだ?」 「・・多分、訓練から逃げていたんじゃないか。お前もよく・・」 「あーぁ、なーるほどな!! うぉ、エルヴェさんこっち来たぞ。」 「・・・・・まあ、今日くらいいいだろう。」 「しらばっくれるのか?兄者。」 「・・・・・・・・たまには、な。」 「ふーん。俺ん時はちっとも見逃してくれなかったのになー」 「・・お前はサボりすぎだ。」 「ちぇー。」 ウェルとティアルは12歳。 遊びたい盛りですね。 そういえば我らが団長の様子はと言うと。 「はー、やっぱりここは落ち着くなぁ」 「ブラッド殿・・・・」 「ん?なんだ、スルギ。」 「・・・・いや、あの。」 「なんだ、ハッキリ言え。」 「・・・・。・・・ブラッド殿の服が川に流されたらしいですぞ。」 「・・・・・なっ、何ーーーー!?」 団長はいつもこんな感じです。 さて、今晩は宴会となるわけですが・・・ それはまたの機会に。 ひとつ言うなら、ディルスの切れっぷりと酒のせいで、それはもうしっちゃかめっちゃかな宴会だったという事でしょうかね。 |